違法医療行為の情報をお寄せください!

2003年06月26日

違法医療行為、粗悪な美容医療の排除・摘発に向けて
皆様からの情報をお寄せください


先日の第86回日本美容外科学会学術集会に於いて「韓国人医師?による自宅出張手術を受けた3症例の経験」と題した症例報告がなされました。これは、偽医者と思われる韓国人が患者または知人宅にやって来て手術を行った事例で、その実態には驚くべき内容が含まれておりました。
その要点をご紹介したいと思います。


◆症状1:39歳/女性/東京都町田市在住

知人の紹介で自宅に術者を呼んで手術を受けた。術者は60〜70歳位の韓国人女性。顔面、両手背、両乳房にシリコンと思われる異物を注入された。注入はアルコール消毒の後、ビンに入ったシリコンを注射器に移して局所麻酔下に行われた。術後、抗生物質が処方された。2週間後頃から炎症を繰り返すようになり、特に乳房から拝膿があったため後日術者により穿刺吸引が行われた。注入異物の除去を希望し、術後7ヶ月目に当院を受診。発赤が散在しているが異物はいずれの部位にも皮下浅く拡散しており、除去や減量は困難と判断し、血液検査のみ行って経過観察とした。

◆症状2:59歳/女性/千葉市在住

千葉県九十九里にある健康ランドへ「あかすり」に通っているうちに、スタッフに美容手術を勧められるようになった。上まぶたの腫れぼったさが簡単になおせると聞き、手術を受けるつもりにはなっていた。後日やはり同所へ通っている知人宅に呼ばれ、ほとんど説明がないまま切開重瞼術が行われた。術者は54歳女性。母国で美容外科に勤務していたらしい。手術は無理矢理おさえつけられてでん部に注射を打った後、局所麻酔下に行われた。費用は20万円。術後の投薬はなかった。術後の不自然な形態と流涙が続くため、術後2ヶ月時に当院を受診。まだ膨張が残っているために、とりあえず経過観察とした。

◆症状3:60歳/女性/千葉市在住

症例2の実姉であり、妹とほぼ同様の経緯で、知人宅でシリコンプロテーゼによる隆鼻術を受けた(症例2とは別の術者)。術直後に温湿布と称してごはんつぶと砂糖をお湯で溶いたものを鼻背に乗せられ、熱傷を受傷。以後近医で軟膏処置を受けていたが、不安なため妹と共に当院受診。鼻背から鼻の先端にかけて2度熱傷がみられたが、ほぼ表皮化は完了しているため経過観察とした。しかし明らかな斜鼻となっていることもあり、プロテーゼの抜去をすすめた。その後当院に来院されないので電話で状況をお聞きしたところ、熱傷創はきれいに治ってはいないようである。

以上が症例の内容ですが、健康ランドがこのような行為をあっせんしている確証はなく、従業員が独自にやったこととして関連を否定しているようです。患者の話によると、千葉周辺で手術を行う者は少なくとも2〜3名おり、手術を受けた人は知っているだけで10名以上いるとのことでした。

症例2はその場になってかなり抵抗したようですが、いずれも手術を受ける気になった理由は、料金の安さと極めて簡単にできるという言葉を信じたためです。症例1と2は結果に当然不満があるものの、今のところ告訴する意志はないようです。症例3では、この許せない気持ちをどこへ訴えればよいかと相談されたため、違法医療行為の疑いが濃いので、警察に被害届を出すようすすめるとともに、とりあえず協会の連絡先を教えました。結局この患者も被害届は出さず、術者に直接かけあって示談金(手術費用の返還と多少の慰謝料)を受け取り、泣き寝入りした模様です。

JAAMでは、被害状況を調査・情報収集し、行政に働きかけています。

私たち医療者は、このような事例に対して親身になってアフターケアをしていくことは当然ですが、粗悪な美容医療行為を排除・摘発するために患者に代わって行動する必要があると考えます。患者側の相談窓口としては警察や県の医療整備課、保健所、国民生活センターなどがありますが、被害届が出されなければ行政は何も動かないでしょう。協会としては、粗悪な美容医療や違法医療行為の追放・摘発にむけて、被害状況を調査・情報収集し、行政に働きかけていきたいと思います。何か情報をお持ちの方は、是非協会までお寄せください。
TEL:03-6267-4550/FAX:03-6267-4555

医師以外による異物注入の危険性について、日本美容外科学会等(平成10年度)で報告されました内容の一部を掲載致します。情報をお寄せ下さいました会員の先生には、この場を借りて御礼申し上げます。


顔面への医師以外による異物注入について
はじめに
本邦では過去に美容目的の異物注入療法が一般的に行われており、液状シリコンやワセリン、オルガノーゲンといわれる混合異物などが使用されていた時代がある。これらの異物は時間経過とともに皮下組織中を移動し変形や異物往肉芽腫の形成が起こり醜形をきたし、形成外科医のもとを訪れることとなる。数年前までは注入異物のトラブルで来院する患者のほとんどは数十年以上前に注入を受けた例があったが、最近になって注入直後の症例が増加している。これらの症例は全例が韓国人であり問診によると韓国人の技術者という医師以外の人物によって自宅で液状異物の注入が行われている。今回、その液状異物を注入前の状態で入手することができたので分析を行った。
方法・材料
異物は2種類あり、透明な粘稠性の高い注射器に入った異物と、白色懸濁液で褐色プラスチック容器に入った異物である。前者は増量を目的に注入される異物で、注入を行っている技術者はアメリカ製のコラーゲンであると主張している。後者は先の注入異物溶解する薬品で、前者の注入が適量であった場合に使用すると説明している。
結果
2大学施設で分析を行った結果、透明な粘稠性のある異物は外観通り液状シリコンであり、白色懸濁液については不明であった。
考察
今回入手した異物はシリコンジェルであり、従来の注入異物と同じであることから、将来的に現在見られる注入異物の後遺症と同様の問題をきたすものであると考えられる。異物往肉芽腫などの危険性のみならず、解剖学的知識に乏しい医師以外の者による施術では神経損傷や血管内注入・感染などの早期の問題点が発生する危険性も高く、最悪の場合には生命の危険性も考えなければならない。異物注入の危険性についてはすでに数多くの報告がなされており、医師はその危険性を認識し使用しない方向に進んでいるが、医師以外の業者が安易に医師法に反した施術を行っていることは社会的にも大きな問題であり、今後とも社会的啓蒙を行う必要性があると考えられる。
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