美容外科のトラブルを防ぐ

2002年09月01日

時々美容外科のトラブルが表面化しています。
実態はどうなんでしょうか。また注意することはどんなことでしょうか?

◆なぜトラブルが起きる?

美容外科は、一般的に緊急性のない科目ですから、必要かどうか、必要ならば十分に治療方針を検討して、そのうえで必要なことだけを行えば、医療事故(過誤は別)は非常に少ないものです。他の科目でしたら、緊急処置などが必要な場合が多く、そういう時はまた難しい治療も要求されますが、苦労して対処しても患者さんからは分からないことが多くて、難しい処置や手術に限って、いわゆる医療事故と言われるものが多くなる傾向がないとは言えません。

それでは、時に起きる美容外科のトラブルは、どんな原因で発生するのでしょうか。まず基本的には、手術が適応かどうか、十分に話し合うことが前提条件です。手術は、体に侵襲を及ぼす行為ですから、合併症は他の科目の手術と同じように起きる可能性はあります。それ以外のものとしては、純粋な医療事故というよりも、症状や希望と一致した診療方針がとられない時に、患者さんからみて不満足感からくる不平不満で、患者さんは失敗感を覚えます。患者さんの期待が大きすぎる時に、期待通りに出来上がらないと言う不満が生じてきます。

美容外科は他の科目と同じく、診察と治療方針の検討や選択が一番大事なところです。いわゆるインフォームド・コンセントです。極言すれば、手術はその方針通り行うだけのことです。その基礎には、正しい形成外科的な知識と技術の裏付けと患者さんに礼をもって接する姿勢が必要で、さらに患者さんを理解するには、人間の文化的活動の分野にも通じていることが必要でしょう。そのためには、文学や音楽にも通ずる方がよいでしょう。医師でありながら文学者でもある人は、枚挙にいとまがありません。実際の医療事故で、報道されている内容とみると、しばしばそういった基礎の問題がおろそかになっている場合があります。これなどは、美容外科のトラブル以前の問題でしょう。

◆どういう点に注意すべき?

皆さんが注意するべき点は、まずしっかりした美容外科医を選ぶことが出発点になります。一般的に言って、広告が目立つからといってそれを信じて鵜呑みにするのは危険です。そうは言っても、そんなに正確な情報を簡単に得られるわけでもありませんから困ります。そのような時は、公益社団法人日本美容医療協会のホームページを参考にされるのも1つの方法かと思います。

広告の中に、患者さんが知りたい情報を盛り込もうという趣旨から、規制緩和が始まりましたが、最初はなかなか知りたい情報ばかりではないでしょうが、次第に正常化する傾向になるでしょう。アメリカでも、広告の規制を取ったばかりの時は、かなり過激な広告であふれていましたが、現在は沈静化しているようです。

営利を目的にすることは、一般企業では当たり前ですが、医療の分野では筋違いになります。しかし、美容外科をそのような目的で全国展開すると、圧倒的な広告量の力で患者さんが集まります。その上「無料カウンセリング」などで患者さん(予備軍)を集め、来所するとセールストークを駆使して、なんとしても手術にもっていこうとするクリニックがあるのも現実です。これからは患者さんの方でも、情報武装して、うかつにはその手に乗らないようにしてほしいと思います。

今、世の中は量より質の時代です。賢い消費者になって、無意味な美容外科のトラブルに陥らないように注意したいものです。それには最初の手術が後々まで影響しますから、最初に選ぶクリニックを慎重に決めることです。

「サンデー毎日」より
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