日時:平成23年10月25日、於:日本美容医療協会
出席者:
細川幸一(日本女子大教授):内閣府消費者委員会委員
坂梨良久:内閣府参事官補佐、
遠藤信一郎、松田有美子:内閣府事務局
日本美容医療協会 広告のあり方委員会:委員長 西山真一郎、副委員長 谷野隆三郎
細川委員からの各質問に対し、下記のような説明を行った。
1) 日本美容医療協会「広告のあり方委員会」の設置の経緯・運用状況について
協会設立理由と広告の問題や違法広告に対し、日本雑誌広告協会等各関連機関との話し合いや自主規制コードの作成(平成6年12月)等について説明。平成19年の一部医療法改正に伴い広告内容等、厚労省医政局総務課の担当者(飯村専門官)とポジティブリストの拡大等について詳細な打ち合わせを行い、その結果を2つある日本美容外科学の学会誌に載せ、その後も担当者の変更に伴い継続協議し、ガイドラインの周知等について要望した。
フリーペーパーにおける違法広告について福岡県と沖縄県の出版元に要望書を出し改善を求めるも、担当官の温度差が大きく、福岡県においては保健所を通じて多少の改善を見たが、沖縄県のフリーペーパーには全く改善が見られなかった。今後、東京のフリーペーパーに対しても要望書を提出する予定である。
2) 美容医療広告の現状の法規制・課題について
法規制(ガイドライン含む医療法や景品表示法など)の実効性には、大いに疑問がある。厚労省や消費者庁はこれらの違法広告の取締りに対してもっと積極的に動いて欲しいと要望。また医療広告は患者の健康被害をもたらす可能性も含んでおり、HPも含めて患者の目線で正しい情報を流すことは医師としての義務であり、一方で厚労省は法律を作った以上、もう少し真摯に対応してもらいたいと要望。
厚労省による指導の徹底。県や保健所に対して広告規制を徹底し、担当者による温度差が無いようにする。それには仕組みを作る必要がある。例えば協会が出版社、都道府県(保険所)、広告主などに要望書を出しても改善が見られない場合は、厚労省や県を通して保健所から厳しく指導をしてもらう。最終的には行政処分を(罰金や業務停止など)を課すしか効果が見られない。特にフリーペーパーや折り込みに対する指導の徹底。フリーペーパーについてはいくつかの団体があるようだが、調べた範囲では日本雑誌広告協会や日本新聞協会のような広告規制を推進している団体は見られなかった。今後も厚労省医政局総務課や消費者庁、消費者センターなどと情報交換や協議を継続し、適正な表示のポジティブリストの拡大に努めていく予定である。
3) 医療機関(美容医療)のHPにおける情報提供のあり方について
現在の医療法ではHPは広告と見なされておらず全く規制が及んでいないが、少なくとも自由診療部門(美容医療、包茎(実際には保険適応である)、審美歯科、矯正歯科、歯科のインプラントなど)に関しては、何らかの対応が必要である。
またバナー広告やスポンサーサイトなどのSEOは、医療広告ガイドラインによると医療法の規制下にあるとされているが、未だに違法広告が多くこれらは取り締まりの対象にできるはずである。HPの内容にも虚偽や過大表現、手術前後の写真等により患者を誤誘導する目に余るものがあるので何らかの対策が必要である。これを請け負う業者(WEB制作会社)にも問題があり、週刊誌における出版社のようにここに法規制の網をかける必要がある。
HPにはコスト、治療法、資格(肩書き)などに、かなりいい加減な記載が多い。HPや広告には安いコストを表示し、受診してから(場合によっては手術台に乗ってから)色々な施術を追加して(トッピングと呼ばれている)法外なコストを請求するといった悪徳行為は未だに行われており、患者からのクレームが協会に入っている。
通常は当たり前に何処のクリニックでも行われている治療法に、スーパーやウルトラなどさまざまな接頭語や修飾語を付けて、あるいは全く異なった治療名称をつけて、あたかもクリニック独自の優れた治療法を行っているがごとき表示を行い、患者を誘導する例が多く見られる。また勝手に個人的な学会や協会を立ち上げて(日本美容指導協会、金の糸アンチエンジング協会など)、会長や理事長を名乗る医師もある。————専門医(厚労省が認めていないもの)、————認定医等も同じである。
またHP等には患者さんの体験談がよく記載されているが、多くの場合は自作自演のやらせと推測される。ただしこれを見極めることは、実際には不可能である。
4) 美容医療の広告の適正化に向けた取組みや現状の課題について
前述したことをひとつづつ行っていくことが大切である。日本雑誌広告協会、日本新聞協会、消費者センターなどとの連携を強化し、協会にきている悪徳なクリニックや被害患者の情報をまとめ、消費者センターなどとの情報を共有して行くのが良い。違法広告に対する情報の共有(一元化)も必要である。
5) 美容医療における消費者トラブル(施術の安全性、取引「勧誘・説明等」の適法性等)の防止に向けた取組みや現状の課題について
クーリングオフについては必要だが、全身麻酔を必要とする場合に前もって麻酔科医を頼んだり、人工乳房を並行輸入で仕入れたりという問題もあり、手術をキャンセルした場合に患者はこれらの補償をする必要がある。但しこれについては、事前に料金についての説明書を取り交わしてあることと妥当な金額が前提である。
6) 「オンライン相談室」の運用状況についての説明
オンライン相談室や夜間電話相談等はボランティアで適正認定医にお願いしている。
7) その他の問題点
「金の糸」などは全く効果についてのエビデンス(少なくとも信頼に足りる論文)がないにも関わらず、十分な説明も受けずに100本以上皮下に埋入されている患者もいる。レントゲンやCTに写るだけでなく、MRI撮影の際の安全性にも問題があるにもかかわらず、施術前にこれらの説明は全く行われていない。これについては警告文が、日本美容医療協会のHPに掲載されている。
また金の糸を含んだ化粧品まで広告販売されておりリフトアップの効能を謳っているが、この状況を行政は一体どのように考えているのか。
8) 医療以外の問題点
医療のみでなく、違法なエステティックサロンなどの野放し状態をなんとかする必要がある。特に厚労省は、レーザー脱毛や光脱毛は医業であり、もしもこれを医師以外のものが行うと医師法違反であると言う判断を既に下しており、過去に京都地裁においてもエステサロンにおけるこれらの脱毛行為に対して有罪の判決を下されている。実際に医師不在のもとに看護師がレーザー脱毛を行ったために、医師が行政処分(医業停止9ヶ月)を受けた事例もある。にもかかわらず、エステティックサロンで堂々とこれらの治療が行われている現状は、行政の怠慢としか考えられない(勿論、多くのサロンでは、レーザー脱毛や光脱毛とは謳っていない)。脱毛ができると言うことは組織(毛根)破壊であるため明らかに医業であり、逆に脱毛ができなければ詐欺行為となる。
ヒアルロン酸やコラーゲン、グルコサミンなどのサプリメントや化粧品についても、本当に皮膚のハリや潤いが増すという科学的根拠がないにも関わらず、広告にいかにこれらの効果があるかの如き表示をして売っている。以前、独立行政法人 国立健康・栄養研究所では調査の結果、「俗に「関節痛を和らげる」「美肌効果がある」といわれているが、経口摂取によるヒトでの有効性については信頼できるデータは見当たらない」としている。化粧品として皮膚に塗っても、これだけ大きな分子量のものが経皮吸収で真皮まで到達するとは考えられない(勿論、表皮吸収ないしは皮膚表面のコーティングによって一時的な保湿効果は期待できるが)。CoQ10を含んだ化粧品も同様に、検証する必要が有る。
発毛や育毛剤なども多く発売されているが、日本皮膚科学会が出したガイドラインでは、外用薬としてはミノキシジル以外には効果が見られないとされている。しかし未だに多くの製品が広告され、販売されている。
これらの効果効能については広告主がそれを証明し、それが妥当なものであれば許可する等の審査を厳しくしていく方が、消費者保護という見地からは現実的ではないか。
参考として、下記の資料を提出した。1と2については協会のHPに掲載してある。
- エステによる脱毛行為に対する厚労省の見解と京都地裁の判決
- 金の糸のレントゲン写真、CT写真
- 皮膚科の育毛に対するガイドライン
ヒアリング後に細川先生から、下記のようなコメントを頂いております。
課題認識は共通で、法の実効性(エンフォス-メント)確保に不備がある。日本では公法と私法の分離が著しく、民事契約の効力に行政が影響力を及ぼすべきではないという発想が強くある。一方米国では、父権訴訟という制度まであり、行政が被害を受けた市民に代わって、違法行為を行った者に対して民事損害賠償請求訴訟を提起し、勝訴した場合は賠償金を分配するということまでしている。
http://www.ac.cyberhome.ne.jp/
~consumer/page015.html
自由診療分野における悪徳医師の制裁制度・被害者救済法制も考えたいと思うが、まずはトラブルを防止するための広告規制が急務と感じている。
前に自由診療の不当請求問題について自分のHPで取り上げたことがあり、東京都消費者被害救済委員会で取り上げられた内容を紹介している。
http://www.ac.cyberhome.ne.jp/
~consumer/page122.html