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関連諸団体各位 |
公益社団法人日本美容医療協会
会 長 保阪 善昭
理事長 吉本 信也
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声 明 |
すでに新聞、テレビ等の報道でご存知と思いますが、この度、エステサロン経営者が光脱毛を医師免許のない従業員に施術させて、逮捕される事件が起こりました。また、昨年には、同じくエステサロン経営者である医師が、医師免許のない従業員にレーザー脱毛を施術させ、また、そのレーザー脱毛器を販売したことにつき刑事訴追され、医師法違反、薬事法違反の有罪判決が出され(平成25年9月5日)、確定しています。
医師法17条は、国民の健康と安全を守るため、刑事罰をもって、医師以外の者による医業(「医行為」を業とすること)を固く禁じています。「医行為」とは、「医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為」をいい、いわゆる脱毛現象を生じさせるレーザー脱毛、光脱毛(以下総称して「レーザー脱毛等」といいます。)は、医師をもってしなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為であって、「医行為」に該当すると解釈しなければなりません。
すでに、平成13年11月8日、厚生労働省医政局医事課長は、医師免許を有しない者による脱毛行為等が原因となる身体被害の報告を受け、各都道府県衛生主管部(局)長宛て通知「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて(医政医発第105号)」を発出し、医師以外によるレーザー脱毛等の施術等の取締りの周知徹底を求めています。同通知では、「用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為」を「医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反する」としています。ここで大切なのは、「毛乳頭、皮脂腺開口部」に限定されず「等」が入っている事です。同通知が、医行為に該当するレーザー脱毛等を「毛乳頭、皮脂腺開口部」の破壊が生じるものに限定する趣旨ではないことは当然です。
また、その翌年の平成14年には、東京地方裁判所において、レーザー脱毛の営業を行っていた脱毛サロンの経営者に対して医師法17条等違反による有罪判決が下されています。同判決は、「レーザー照射により真皮、皮下組織等に膠原線維変性等の影響が生じうるもので、火傷等の皮膚障害が発生する危険性を有し、レーザー脱毛の施術に当たっては、被施術者の体調、皮膚の色、毛の太さ等を考慮して照射量、照射時間等を決定し、施術後に問題が生じれば消炎剤、抗生物質等の薬剤投与が必要となるなど、医学の専門知識及び技能がなければ、保健衛生上人体に危害を及ぼすおそれがあると認められる」とし、レーザー脱毛の施術は医行為に該当すると判断しました。ここでも、「皮下組織等」、「膠原線維変性等」、「火傷等」とされているとおり、レーザー脱毛による人体への危害のリスクは特定の組織の破壊に限定されていません。
前述の平成25年9月5日判決においても、裁判所は、「脱毛器を使用して」、「皮膚に光線を照射し、その熱エネルギーにより毛包幹細胞を変性させる方法により脱毛するなどの医行為をし」たことを犯罪事実として、医師法17条に違反することを理由に有罪判決を下しています。また、同判決が、問題となったレーザー脱毛器は、製造販売にあたり薬事法上の承認が必要となる医療機器であると判断し、このレーザー脱毛器の無承認販売について薬事法14条1項等違反としたことも重要です。
国民の健康と安全を守るという医師法17条の趣旨、上記105号通知及び上記判決を踏まえれば、エステサロンやレーザー機器メーカーの、「毛乳頭、皮脂腺開口部が破壊されなければ」無資格者がレーザー脱毛等をしても良いなどという手前勝手な解釈は通じないと認識すべきであり、電気針脱毛は勿論、レーザー脱毛等のように強力なエネルギーを有する光線を照射し脱毛を行うことが医行為である事は明白であります。この点は、上記判決が、「毛包幹細胞を変性させる」行為をもって医行為に当たると認定していることからも、疑いの余地がないものと思われます。
以前、通産省(当時)と東京都の指導で行われた、日本エステティック研究財団による臨床試験の実施要項では、「毛の再生機構を破壊せず、90%以上の毛が再生する機種を用いた脱毛はエステでも安全に施術ができる」と言う判断が出ましたが、上記105号通知や上記判決が下されたのはそれ以降のことです。いわゆる脱毛現象が生じるような強いエネルギーを照射するということは、全て医行為であると解釈しなければなりません。こうした医行為に該当するレーザー脱毛等を行った場合、医師でない施術者が医師法違反に問われるのみならず、脱毛器の製造・販売会社も薬事法違反に問われる可能性があります。さらにエステ脱毛は、衛生上の不利益を生じさせるおそれもあります。
勿論、医療機関で施術を受けてもやけど等が生じる可能性が全くないとは言えません。しかし、問題は、レーザー脱毛等がやけど等の人体への危害を生じさせる可能性のある行為であるという点にあるのであって、その施術には医師の医学的知見と技術が必要であり、万が一やけど等が生じた場合でも、医師、医療機関であれば迅速かつ適切な対応が合法的にできるということです。
以上お知らせ致しますとともに、日本美容医療協会では消費者保護の立場から、違法なエステ脱毛行為は絶対に認めないと言う判断をしておりますので、よろしくご理解、ご協力の上、ご周知のほどお願い申し上げます。
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以上
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